ピケティの教えで日本の格差問題を考えた

このページではピケティ教授が提示したデータをもとに、日本社会の格差問題を考えてみたいと思います。


「21世紀の資本」で述べられた格差問題の解決策として「格差が広がっている。金持ちにもっと課税せよ!」という主張がありますが、


では「日本の金持ち、格差問題」をくわしく考えます。

実は世界各国をみれば状況がちがいます。


国ごとに経済規模や税率も違いますし、金持ちの人数やお金持ちとされる金額にも違いがあるんですね。


データは、ピケティ教授と研究グループが世界から所得の比率を国ごとにデータで集めて無料で公表する

→World Top Incomes Database


を参考にしています。

まずはお知らせしたい結論を述べたいと思います。



日本の格差は、金持ちへの富の集中というより、

社会全体で貧しくなった人が増えたのが問題。

アメリカと違い上位1%の金持ちに富が集中する傾向は少なめで


長い経済低迷で、中間層から低所得層に転げ落ちた人が増えたのが原因

昔なら中間層に分類されるような人たちがトップ10%にランクインしているのでは?


が結論になります。  

それをあらわす下の表2つで解説します。


1 日本の大衆層の富の取り分の少なさは、格差が大きい国とほぼ同レベルに変わってきた



・所得トップ10%(金持ち)、とそれ以外90%で

国の富をどれだけ分け合っているかの割合の表


     日本    アメリカ    韓国
上位10%の比率        39.5%          48%          44%
下位90%の比率   59.5%          52%          56%


    イギリス   デンマーク   スウェーデン
上位10%の比率        40%          29%          28%
下位90%の比率   60%          71%          72%


この表をざっくり説明すれば、「国ごとの富がどれだけ所得上位10%にとそれ以外の90%で分け合っているか」をあらわす表です。

日本は上位10%に入る金持ちが富全体の4割を占める。中間層、低所得層の取り分は約6割。


たとえば日本国全体の富が100万円としたら金持ちは40万円。

中間層・低所得層は60は持っている、という意味ですね。


これがアメリカだと上位10%と残り90%で半々を分け合う形です。


アメリカは超格差社会で有名ですが(参考 →アメリカの格差社会


上位10%の高所得層が国の半分の富をにぎる国、それがアメリカ、といえます。


韓国イギリスも日本と似ていて4対6の比率、フランスはそれより下がり3対7くらい。デンマーク、スウェーデンは福祉国家で格差が小さい国として知られています。こちらも3対7くらい。


日本はアメリカよりは独占がひどくないし、韓国、イギリスと同じくらいだしいいじゃん?と思うかもしれませんが実は安心できません笑。


・韓国
・イギリス

もアメリカほどでないにせよ「格差社会、貧富の差」で有名な国です。


韓国といえばサムスンや現代自動車の財閥、財閥が韓国GDPの7割以上を握ると言われており、財閥系企業に就職した人間とそれ以外の格差が深刻です。


参考 →韓国は財閥系企業に就職できないとフリーターに  


イギリスも上流階級と労働者階級、階級間の移動が少ない社会と言われています。

参考 →イギリスの格差

→韓国は10人に1人が最低賃金未満


・日本の下層の90%の人の割合   →59%

という数字


アメリカ・韓国・イギリスという国々は

・経済格差が大きい国

と知られています。

それらの国と

・下層の90%  VS  上位10%のリッチ層


の富の配分の割合が、格差が大きいと言われる国と、6割くらいでほとんど変わらなくなってきました。


上位10%  VS   下層 90% の富のぶんどり合いの比較でみたら


貧富の差が大きいとされる韓国やイギリスと同じくらいの水準まで来ていると考えることができます。


下は日本の10年ごとの上位10%と残り90%の富のとり合いの割合の推移です。


   1980年  1990年 2000年  2010年
上位10%  31.34%      33.7%  37.15%      40.5%
残り90%   68.66%   66.3%      62.85%   59.5%



1980年に3対7で、大衆層が7割を持っていたのが、2010年には4対6で6割に下がっています。

これが話のひとつ目です。次に2つ目の話です。



2 日本のトップ10%に入る人と残り90%の人の年収格差は他国に比べ激しくない。

しかし日本で年収トップ10%に入る数字は576万以上という数字は低い!?  対してアメリカは1287万



・トップ1%~10%を3つの層に、

それ以外90%と分けた時の年収の平均幅とその割合の表


          
      日本     アメリカ
  トップ1%の年収   全体の富の何割を占める       ~1279万円以上          9.5%     ~4329万円以上          19.3%
 年収上位の1~5% 1279 ~ 754万円            16% 4329~1872万円         16%
 5~10%  754 ~ 576万円           14% 1872~1287万円       12%
     残り90%   576万円以下          59%      1287万円以下         52%
   平均年収   380万円   500万円
  GDPは世界何位?       3位      1位


      ドイツ     フランス
  トップ1%の年収   全体の富の何割を占める       ~2025万円以上          12.7%     ~1755万円以上          8.0%
 年収上位の1~5% 2025~1066万円            14% 1755~931万円         13%
 5~10%  1066 ~ 769万円           11% 931~702万円       11%
     残り90%   769万円以下          62%      702万円以下         68%
   平均年収   331万円   281万円
  GDPは世界何位?       4位      5位


この図から読み解けるのは


①日本でトップ1%にはいる人の年収の下限は1279万

 (日本で年収1200万以上の方はトップ1%です) 

対してアメリカはトップ1%の年収の下限は4329万で日本の約3.5倍



 →日本の金持ちの年収の下限はそこまで高くない



②アメリカのトップ1%で富の約2割を独占、対して日本は1割。日本のこの割合に過去からそう大きな変化はない



→金持ちの富の独占はアメリカほど激しく起きていない



③日本のトップ10%に入るための年収の下限は576万、対してアメリカは1287万と倍以上の開き、フランスドイツで700万


→トップ10%に入るための年収が576万とは低い?
日本経済の長い低迷で中間層が消えた社会です。



① 日本でトップ1%に入る年収は1200万強

→日本でトップ1割に入る金持ちとは、実は年収ウン千万も必要なく、

下限で年収にして1200万くらい。アメリカは4000万を超えますから差が大きいですね。


1200万という数字は、上の表から


・日本の上位1%  →  アメリカの上位10%の下限


で偶然同じですから、実は日本の金持ちは、アメリカの上位10%に入るくらいに数字で、アメリカからみたら日本の金持ちは小さく見えるかもしれません。



1200万という数字は、日本では平均年収の高い上場企業や、大企業の課長クラスの年収でトップ1%に入れるのが分かります。






対してアメリカは4000万以上稼がないとトップ1%には入れません。


これと②、日本は年収1200万までの上位1%の金持ちが、日本でどれだけの富を独占してるかといえば、10%です。

対してアメリカは20%。

日本に限っていえば、トップ1%が富をにぎるという意味での格差



・一握りの超リッチ VS  貧困層 という意味での「貧富の差」は少ない

といえます。


ここ30年のデータを見ても、日本のトップ1%への富の集積度はあまり変化がありません


      1980年      1990年    2000年    2010年
上位1%富の比率          7.16%          8.05%         8.22%          9.51%


なぜそこまで進んでないかの理由は

・金持ちに課される相続税や所得税の高さ

にあります。


→主要国の相続税負担率


日本の相続税の高さは世界最高水準で、最高税率で55%。

所得税は最高税率で45%


ピケティは「金持ちからもっと課税せよ」と主張してますが、他国と比較して日本社会に限っていえば

・すでにある程度は金持ちからたんまり税金をとっている

と言えるかもしれません。



日本から脱出する金持ちたち


お金持ちの肩を持つわけではありませんが笑、「もっと金持ちから税金とればいいやん」とも単純にはいきません。

お金持ちたちは「こんな税金が高い国に住んでられるか!」と国外脱出する人が増えています。


お金持ちが多い東京都港区では金持ちの国外脱出で、住民税の税収が減少した年もありました。


→金持ちの日本脱出が広がる   


金持ちの海外脱出に政府も対策に乗り出し、「出国税」なる国外に資産を持って移住する人に取る税金の導入も検討しており、今後の動きがどうなるか注目です。


逆にアメリカ、イギリスは「上位1%への富の集積が進んでいる」とピケティは警告しています。


日本でそれよりも問題なのは、

・中間層の没落

です。


日本の格差の特徴はアメリカのように

・金持ちが超リッチに


どんどん金持ちが増えていくという実感はなく


・日本全体が貧しくなっている

・昔なら中間層に分類されていた人が高所得者に見られてしまう世の中が日本

といえるではないでしょうか。


よくニュース番組の街角インタビューで

「あなたは景気がよくなった実感はありますか?」

と質問されて


「実感はない」と答える人が多いですが

実はそれは正しいんですね。


フランスの上位10%に入る年収は702万、ドイツは769万で、対して日本は576万。


ドイツやフランスよりも150万近い低い金額で、上位10%の年収に入ってしまうのがデータで分かります。


フランスはGDPが世界5位で日本より下ですがこの数字負けています。


576万の年収で上位10%に入るのが高いか低いかをどう見るかでしょうが、

やはり平均年収が下がり、定年を迎えた高齢者が増え、非正規労働者や生活保護受給者が増えるなど


低所得者が増えたことで、昔なら中間層に分類されていた人が高所得者に見られてしまう世の中が日本といえるでしょう。


例えば

・公務員の給料は高い

とよく言われていますが

・総体的に民間の給料が落ちて、年収の変化が少ない公務員の給料が高く見えるようになった、ともいえるのではないでしょうか。


同様の議論は知恵袋でも 参考 →知恵袋

日本の中間層がどのくらい減った、低所得者層が増えたというのは残念ながらピケティ教授のWorld Top Incomes Databaseのサイトにはありませんが

例えば下のようなデータがあるのは見逃せません。


格差をあらわす指数 ジニ係数は過去最悪に


→ジニ係数 過去最悪に

ジニ係数とは、格差がどのくらいあるかを測る指数として用いられ、

1に近づくほど格差が大きいとされています。


ジニ係数は年々増加しており、2011年は0.5536となり、過去最悪となりました。



〇相対的貧困率も過去最悪に 6人に1人が貧困にあえぐ

  →出典





相対的貧困率は、貧困状態にある人の割合。調査では16.1%


平均の所得のさらに半分。前回調査では所得122万円以下の人の割合です。

しかも先進国の中では、アメリカに次いで2番目の悪さです。絶対的貧困率 という食料がなく飢えるレベル、の統計数値は高くないですが、しかし月収10万円くらいで生活する人の数が年々増えているのも事実です。



〇平均年収は上がらない、下がり続けた




〇正社員 60%  VS 非正規労働者40%   

非正規社員が年々増える



→出典



〇若者の貧困

・20~34歳の独身者男性の3割弱が年収200万円未満

→参考


若者の貧困に関連して、結婚せずに一生独身のままでいる人たち

生涯未婚率も過去最高を記録しています。2030年には男性の3人に1人は独身というデータも。



〇生活保護受給者は年々増加

生活保護の受給者数は216万人を超える


→出典  



〇貧困が原因の負の連鎖。教育との関係。6人に1人が就学支援


貧困と教育には関係があるといわれ、貧困なほど教育への投資が減り進学をはばみ

お金持ちほど教育費にお金をかけて結果的に良い職業に就き、高い給料を得られる傾向があります。


これが何世代も続けば階層が固定化し、深刻な格差となってあらわれるでしょう。


セーフティーネットが実は他国より遅れているか!?
アメリカよりも実は日本の生活保護制度は充分とはいえない



生活保護の捕捉率(保護を受けるべき人がちゃんと受けている率 2010年)

          日本       フランス     ドイツ スウェーデン
       人口     1.27億人  6503万人   8177万人     941万人
生活保護受給数  119万人     372万人    793万人      42万人
  利用率          1.6%    5.7%         9.7%        4.5%
  捕捉率 15.3~18%   91.6%        64.6%          82%


生活保護支出の対GDP比

          日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス
対GDP比  0.3%       3.7%        4.1%       2%         2%



生活保護といえば、不正受給や外国人受給の問題でクローズアップされますが

重病で会社をクビになった、借金を抱えてしまった、年寄りになって年金だけでは生活できない


困窮した場合に、生活保護は最後のセーフティーネットであるのも事実です。



実は日本の生活保護制度というのは他国より充実しているとは言い難いです。


日本は国民皆保険で医療保険制度は世界トップクラスに充実しているので、単純には言い切れませんが他国と比べると生活保護の


・捕捉率

・対GDP比での生活保護予算


というのは実は他の先進国に比べてかなり低いんですね。


もしリストラや突然の病気で仕事がうまくいかず蓄えも底をつき、貧困層に没落した後に、ホームレスにならずに生活し社会復帰できる仕組みが充実していけば、より安心して暮らしていけるとのではないでしょうか。



アメリカは一部で動き出した



*外交や憲法問題の主義主張はみなさん違いますからそれは置いておき、このページは格差問題だけにフォーカスしてます。


アベノミクスでは確かに株価が上がり、賃金の下降に歯止めをかけたともいえますが、あくまで「経済成長」「景気回復」を主眼に置いた政策であり、

「格差是正」「所得の再分配」については見劣りします。


格差是正を考えれば、もっと直接的に富の再分配をうながす制度、例えば低所得者への子供の奨学金の減額制度や、若者を支援する制度があった方がより直接的に対策を感じるのではないかと思います。

→格差是正のため富裕層に増税へ


アメリカではピケティの論争の影響があったのかもしれませんが、2015年2月にオバマ大統領は金持ちへの増税をする一方で


その予算を格差是正のために、子育て費用の支援の拡充や、失業者の職業訓練の政策を進める発表をしました。


アベノミクスは大企業が業績が好調に先になることで、従業員の給料を上げて、それが消費やその他の中小企業の給料アップに波及する「トリクルダウン」が起きるとの主張がありますが、

確かにトヨタをはじめとした大企業の賃金がようやくアップしてきたものの、そのアップ分が物価上昇に追いついていなく、賃下げと同じような現状にあります。

期待はしつつもこれからも注意深く見守っていかねばなりません。

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